仕事11日目。

工場内では様々な騒音が発生する。コンクリートを打ち込む時に気泡を抜くため型枠を振動させるモーター。インパクトと呼ばれるボルトをがっつんがっつん締める工具。その他色々。工場がフル稼働の時は通常の大きさの声では1m先の人と会話するのは困難である。
そのような音から耳を守るためかどうかは知らないが耳栓は標準装備品である。耳栓をしていても大きな音は聞こえるがかなりマシになる。耳栓をしてもしなくても会話は大きな声でしないと聞こえないから仕事には何の支障もない。
耳栓をしていると小さな音はシャットアウトされる。大きな音もずっと聞いていると無意識に無音と同等に見なしてしまう。逆に自分の息遣いや声は外界の音よりも大きく聞こえる。そう言う状態で一心に型枠の掃除など単純な作業をしていると無心の境地と言った感じの状態になる。そのような状態の時は頭の中で曲が流れたりする。その曲は毎回同じわけではないが、その無心の状態が継続する限りは同じ曲が延々と流れ続ける。そう延々と……、いつまでも……。