祭りだ、祭りだ……。

朝も早よから叩き起こされて近所の神社の掃除を命令される。神社と言っても普段は神主も居ない。部落ごとに用意された小さな神社と言ったところである。
何故、掃除かと言えば今夜は祭りだそうだ。祭と言っても賑やかな行進をしたり屋台が軒を連ねるわけではない。神社の舞台にて備中神楽が催されるのである。まぁ、私が幼少の頃は屋台の2つ3つは在ったと記憶しているが儲からないのであろう。物心付いた頃には1件もなくなっていた。


さて掃除と言えど何をするものか。普段に神主が不在であるからして木の葉を箒で掃く作業がメインとなる。また、(たきぎ)を用意せねばならない。もっとも私はチェーンソーで切った木を運ぶだけであるが。それらの作業も昼頃には終わった。


夜になると太鼓の音が聞こえてくる。晩飯を食ったら神楽を観にいく。大きな焚き火の傍で観る事にした。神楽が終盤に差し掛かると薪が余るので大量に投入されるが、この頃になると炭と化した木が沢山の遠赤外線を出しているので近付くとかなり熱い。
さて、最近の神楽は面白い。漫談有りぃの、アドリブ有りぃの……。大夫(だゆう)を交えた掛け合い漫才はなかなか面白いものである。しかし、声が少し聞き取りにくいのが難点か。方言丸出しと言うか神楽の性質上方言で演じられるので聞き取りにくいと困る。そんなこんなで24時過ぎ、どこぞの神様が八岐大蛇(やまたのおろち)の首を取って神楽終了である。


この神楽、都合5時間足らずで終わった事になるが本来はもっと長い。間を省かずに全て演じると夕刻に始まり明け方まで続く。昔は全てやっていたらしいが、明け方になると人が殆ど居なくなる為、現在のように短くなったのだと言う。


他の地域はどうだか知らないが、この辺りの備中神楽ではちょっとしたイベントがある。途中21時過ぎに大黒様が出てきて、やれ目出度しとばかりに福の種と称してスナック菓子や小さな袋に入れた餅やミカンを観客に投げる。菓子や餅は良いがミカンは一度地面に落とすと大抵割れるのでなかなか狙いにくい。また、24時前にも爺さん婆さんの末娘とどこぞの神様が結婚だとかで、やれ目出度しとばかりに引出物と称して(同上
面白いことにこれらが振舞われる時間帯は毎年ほぼ同じ事から、この時間帯だけ人が何処からとも無く湧いて出る。振る舞いが終わるとさぁーっと人が居なくなる。
今日の私の戦利品はスナック菓子の小袋6個と餅2袋であった。